我ら牙持つ狼なれば

御山の総力をあげての『総動員』より早十年。
新人自衛部隊員犬走椛が配属されたのは、十年前の大敗北以降
『負け犬』と呼ばれ続ける男の配下。椛の友人にしてその男の娘たる
はたての人生に暗い影を落とし、はたてが引き籠る要因を作り上げた
白狼、敗戦の将たる姫海棠が率いる第三小隊。
反発心と職務の間で揺れながらも椛たちが一端の兵となりつつある
その裏では、十年前の猛威の残滓が少しずつ蠢動し始めていた。
そして遂に姿を現した怨敵を前にして、一丸となれない第三小隊の取るべき道とは――?

己が戦う意味は何処にありや?

この話の主人公はまったく可愛くありません。
可愛くないのでちゅっちゅもしません。
この話の主人公は特別な存在ではありません。
特別じゃないので秘めた才能も特殊な過去も境遇もないです。
この話の主人公はまったく強くありません。
強くないのでそこいらのモブにあっさり負けます。
この話の主人公は凜々しくありません。
凜々しくないのでそこいらのモブより目立たないです。

ここにいるのは白狼天狗自衛部隊第三小隊の平隊員、
社会の中で、社会に埋もれて、社会に大して貢献もしない、下っ端で普通な白狼天狗。

美しく生きるなど夢のまた夢、数多の豪傑たちに埋もれて生きるが定め。
努力をしても英雄になどなれない、異変においては助演を担い主演を羨むが限界、
されどプライドだけは無駄に高い負け犬の、泥臭くて、しかし精一杯の生き様をここに。

なお、庶民の話なので本作はモブ祭りです。
悪しからず。